1997-10/15(水)~10/24(金) 臨床検査バイトを兼ねたシナリオ合宿???

臨床検査画像
面接に来たある人の紹介で「臨床検査」のアルバイトを受ける事になりました。

 

「臨床検査」というのは製薬会社が、発売したい新薬が人体に対して悪影響が無い事を実証するため、健康な人を対象として薬を投与して実験をすることです。

 

要は人間モルモットのバイトです。

 

紹介してくれた人の話によると、このバイトは普通は日帰りか1~2泊くらいの入院のものがほとんどらしいのですが、今回僕と丸島が応募したのは10日間病院に軟禁されるという非常に稀な大型タイプのものらしいのです。

 

参加者のルールはシンプルで、

 

◇1:男である事 (生理の影響を避ける為女性はダメらしい)

◇2:健康である事 (僕のどこが?)

◇3:10日間病院に軟禁され外出は一切許されない事

 

以上を守れれば参加資格ありという事です。

 

軟禁中は何日かに1回とか定期的に薬の点滴を打ったり検査の採血をしたりしますが、その他の時間はフリーな上(外出は不可ですけど)、朝・昼・晩は上げ膳・下げ膳でおいしい食事が出ますし、2人部屋ですがホテルみたいな部屋(一応病棟です)に宿泊できます。

 

(狭いビジネスホテルみたいな部屋でしかも二人部屋ですが、僕とマル(丸島)にしたら自分達の部屋よりずっと清潔で広いので最高です)

 

しかも暇にならないように娯楽室なる部屋が設けられていて、そこには「TV」「TVゲーム」「ビデオと映画」「各種ゲーム類(ボードゲームや将棋・囲碁・麻雀など)」「大量の漫画や雑誌」があって暇つぶし対策も十分です。

 

もちろん拘束期間が普通より長い分、今回は報酬もいつもより多くて10日間で40万円でした。

 

今の僕に言わせれば、それでも絶対にこういうのは参加しちゃダメだと思うのですが、まあ当時の僕らとか安い給料でバイトしている若者には夢のようなアルバイトに感じるので、(こういうバイトって必ず口づてで募集していてバイト雑誌などには載らないのですよね)人づての募集にもかかわらず大量の応募者が集まっていました。

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この時に描いた絵コンテ。この頃は随分と丁寧に描いてます。

 

◆アルバイト(モルモット)の募集人数は8名。

健康診断などの一次審査を経て、なんと僕とマルの2人ともが激戦を勝ち抜いて受かってしまいました。

 

そうしてある地方病院へ新幹線(もちろん切符代は出ますし弁当まで出ました)でやってきたのがこの日という事です。

 

でもいざ病院に着いてみると、合格者は8人という事だったのですが10名の応募者が来ていてます。

 

実は大事な実験なので、当日に体調が悪くなる人を考慮して予備の存在が2人いたのです!

 

初日ですが、この時点で最終チェックとして再度健康診断を受けて、より健康体の上位8名だけがバイトに残り下位2名はこの日の日当だけもらって帰らなくてはならないのです。

※もうなんか健康者だけが生き残れるという、地下ならぬ病院で行われる「逆カイジ」ですよ!

 

10日間の日程を空けてわざわざ新幹線でやってきたのに、ここまで来て不合格になったらたまりません。もらえる予定だった40万円もパアです。

 

ですが奇蹟的にここでも僕とマルは勝ち残り、参加者8人の中の2人として一緒に参加することになったのです!

(今考えるとすげーな!)

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この頃のシナリオでは完成版と違い槻黄泉が幻覚士と戦い樺龍は阿修羅という別の敵と戦います。

 

◆更にこのアルバイトには特徴的なルールがあります。

モルモット8匹・・・もとい8人には点滴で薬を投与するわけですが、精神的影響の作用を除外した実験データを得るために、被験者のうち2人は薬ではなくて単なるブドウ糖を投与するのです。

 

誰がその2人であるかは僕らモルモット達はもちろん、現場にいる医者や看護師さんら全員がわからないようになっています。

 

つまり8人のうちの2人は10日の間、毎日ゲームしたり麻雀したりスーファミしたり映画観たりしては、食事の時間にはご飯を出してもらえて、食べ終わったら片づけてくれて、たまにブドウ糖を点滴されるだけで40万円がもらえるという訳です。

 

はっきり言ってそんなラッキーなアルバイトは他にあり得ません。

 

だけどそういう時にかならずババを引くのが僕の悲しいところで、点滴を始めたその瞬間からバッチリ血管が赤く炎症をおこしてかゆくなり、まれに薬の副作用が出る人がいると言われていた「眼痛」も始まり(受験者中でただ1人僕だけが)物凄く痛みに苦しみました。

 

そしてマルはそういう時になぜかうまい具合に難を逃れる生き物で、6人は何かしら副作用らしき症状が出ているのにこいつはピンピンして元気で100%ブドウ糖の「勝ち組」なのが明らかでした。

 

完全にアウト画像

 

 

10日間、被験者(モルモット)達はフリーの時間を娯楽室で麻雀やらゲームやらをして過ごしていましたが、僕はそもそもシナリオや絵コンテ作業をやりに来たわけなので、皆から離れて1人で誰もいない食堂室の机に向かって絵コンテを書く毎日でした。

 

でもとにかく目の奥がすごく痛くて、

「眼が痛~い。眼が痛~い」

と泣くように呟きながら描いてました。

 

絵コンテを書くのによりによって目が痛いというのはあまりにも予定外です。

 

その間マルは皆と麻雀したりTVゲームしたり・・・僕が絵コンテ書くんだから僕がブドウ糖でピンピンして作業をすすめて、マルが眼痛の方がどう考えても合理的だろうが!と神様にブチ切れたところで誰も元には戻してくれません。

 

食堂には給食係のおばちゃんが何人かいましたが、ある日僕が絵コンテに夢中になっているとつかつかと近づいてきて

「漫画家さんですか?サインを下さいな」

と言います。

 

「いや、僕は漫画家じゃないですよ。これは映画用の絵コンテなんです」

 

と返すと

 

「映画監督さんですか?サインを下さいな」

 

・・・もう面倒なのでサインはしましたが(名前を書いただけです)ちゃんと保存してるんでしょうか?

 

食堂画像

食堂にて 給食のおばちゃんと

 

現場には担当の医者は1人だけで看護師も1人だけの合計2人しかいませんでしたが、なぜか製薬会社の営業担当者もずっとつきっきりで現場に入っていました。

 

ストレートに書きますが、絶対に裏金渡してるだろ!

 

製薬会社にしてみたら臨床検査というのは、研究開発費とか莫大な費用のかかった薬を許認可の為に実験しているわけだから絶対に問題なくパスしてほしい訳だろうけど、仮に数億円の費用がかかった薬を世に出すためだったら、医者1人と看護師1人にそれぞれ数百万円くらい払っても損ではないですよね。

 

どうしても僕は世の中をそういう穿った見方しかしないので、製薬会社の営業がいつもウロウロしているのは気になって仕方がなかったのですが、そんな営業の男がある時わざわざ僕を名指しで呼び出して

 

「梅崎さん血がドロドロだからヤバいよ。もっと野菜を食べないと!それと治験はやらない方がいいよ!」

 

などとのたまいました。

 

ブチ切れ寸前です。

 

製薬会社の営業マン画像

製薬会社の営業マンと

 

ですが、まあ「治験はやらない方がいい」という意見には僕も賛同します。

 

やらせている製薬会社の人間が言ったのだから間違いないです。

 

最悪の体験ではありますが、でもこの10日間の絵コンテ作業と丸島と2人合わせて80万円の収入が無かったら「楓牙」の完成はどうだったかわからなかったという意味では一応意義のあるアルバイトになりました。