1997-05-19(月) 短編作品「アトリエから(イメージ)」が完成する

短編といえど完走してくれた人達との信頼が生まれる
「楓牙」のストーリーの詳細をマル(丸島)と打ち合わせを繰り返しつつ、アルバイトやら病院やらプールやら。。。そしてその合間を縫って短編作品の仕上げ作業を行い、ついにこの日「アトリエから(イメージ)」が完成しました。
この作品は「アトリエから」という長編ストーリーのシナリオを基にした予告編的な短編作品で、この作品を作るために募集した役者としてケン(高村)やくさなぎさんやサル(藤谷)はZOLTARに関わるようになっていたのです。(全員「楓牙」に出演)
また、既にマルは僕と一緒にスタッフ側の人間でしたし、「楓牙」や「INGA!」で音楽・照明ほか、スタッフとして色々と活躍する渋谷君もこの作品以前から仲間でした。
この作品に参加してもらって完成まで一緒にやってくれたという信頼があったからこそ、「楓牙」ではケンやサルなどにメインキャストをお願いできたのです。
逆に言うと、この日以降に参加してくれた役者やスタッフの人たちは、単にこういった過去の作品を見せられて、熱く必死にやる気を語られる以外には何の根拠もないまま、1年以上の間「1時間30分の8ミリフィルム自主映画の忍者ドラマが面白くなる」と信じてついてきてくれたわけです。
それって実はものすごい事なんです。本当に感謝です。
正直、夢破れました
「アトリエから」長編ストーリーのあらすじはというと、卒業をひかえたモラトリアム時期の大学生3人組の夢や苦悩を描いた青春ドラマなんですが、実は主人公は夢の中を飛ぶことで眠っている間に人の心の中を行き来することができるというSF設定があり、そこになぜか作家の武者小路実篤と志賀直哉が現れて大きく話に絡んだり、重大な事件を起こす謎の女やら死神までが絡むミステリーでもあるという複雑な娯楽作品になっています。
これは将来的にその長編を撮るためのテストを兼ねた短編イメージ作品でした。
複雑なストーリ-のエンタメ大娯楽作でありつつ芸術的にも優れた美しい映像作品・・・を目指しましたが正直ダメでしたね。当時の技術的な環境もそうだけど自分自身のスキルも全然足りていませんでした。
なんとか「映画」としての雰囲気が感じられる作品にしたくて、あの手この手を使って頑張ってみたつもりなんですが、どうしてもどうしても頭に描いている世界観・映像・音響に現実が届かずにもがいていた時です。
そもそもこんなストーリーは今現在でも「世界観をきちんと表現して満足できるように」完成させようと思ったら何十億円も必要だろうし、ちょっと制作には及ばないですねぇ。
でもこの頃は「8ミリフィルム」や「VHSビデオ」という本当に小さくて頼りない機材で「映画の世界観」や「アート」という極上の表現を目指して何が出来るか?を限界まで極める為に全力で戦っていて必死でした。
使えないビデオ映像・扱いが難しい8ミリフィルム
8ミリフィルムは解像度が最悪で全体がもやっとしか映らないから少し引いた遠い画面だと人物の顔すらよくわかりません。また、かなり明るくないと綺麗に映らない為、ほんの少し暗い場所で撮影するだけでも照明などの大掛かりな機材が必要になります。(夜は当然、普通の蛍光灯がついた室内などでもほとんど映りません)
それでも8ミリフィルムだとそれも”フィルムの味”として許される世界観があります。
ところが昔のVHSなどの古いアナログビデオカメラの画質はそうではなく、フィルム映画の雰囲気とは程遠くて個人的に大嫌いでした。
でも「アトリエから」は夜のシーンが満載だったので、暗さに弱い8ミリフィルムでの撮影が非常に難しく、なんとかビデオカメラを自分なりに創意工夫してアーティスティックに処理できないか?と必死でした。
最終的にこの短編作品が完成しても、やはり思い描いていた理想とは程遠い映像でした。そうなると元になったシナリオ(長編作品)は当然イメージ通りに撮影出来ないから作れないわけで・・・「商業映画に負けない長編映画を創りたい!」と思いながらも挑める状況ではない!そんなジレンマに陥っていました。
ものすごく古い作品だしテスト的な意味合いの強い予告編なので、正直僕自身の名誉の為には本当は公開したくないのですが、このサイトはこれから映像制作を目指す若者にも向けて書いてる側面もあるので、稚拙な作品ではありますが色々な経過を経ているという流れを感じていただくためにご欄いただけたらと思います。
「アトリエから(イメージ)」: 監督・撮影・編集:梅崎雄三 脚本:梅崎雄三・丸島健 1997年 カラー&モノクロ 25分ビデオ作品(撮影一部8ミリフィルム) 長編版のストーリー: 卒業を間近に控えた大学生の主人公、幸助(こうすけ)は恋人の杉子(スギコ)がフランスでの就職の夢を叶えたり、一方で親友の勤(ツトムだがあだ名でキンと呼ばれている)は自分の夢を追って就職もせずに登山(長編版ではサーフィン)に明け暮れているのをうらやましく眺め、煮え切らない自分に悩む日々を送っていた。 そんな主人公だが、実は子供のころから寝ている間に他人の夢に入ることができてしまうという特殊能力を持っていて、大学生になってからは頻繁に杉子や勤の夢へ飛んでいた。 夢の世界には、その人の心を表すたくさんの絵画が飾られていて、杉子や勤とフランスや山について毎晩語り合うのだが、目が覚めて昼になると彼らは夢でのことは一切覚えていないのだった。 そんなある日、昼間の勤の様子がおかしくなる。 勤の夢の部屋から一番大きくて綺麗な「山の絵」が失くなってしまったのだ。 夢の中で幸助はその原因を調べ始めるのだが、そこで2人の不思議な男たちと出会う。 「ムシャ」「シガ」と名乗る彼らはある目的の為に夢の中にとどまって活動をしているらしいのだが、幸助の話を聞いて一緒に原因究明のために行動をともにするようになる。 勤の大事な絵の紛失にはある謎の女が絡んでいる事がわかるが、ムシャ・シガや女の行動がキッカケで杉子が交通事故に遭ってしまう。 杉子の意識が遠のくにつれ崩壊へと向かい始める杉子の夢の世界。 崩壊に巻き込まれると戻れなくなる危うい夢の世界の中で、だが幸助は勤の絵を取り戻し、杉子の命を救う為に奔走する。 時間い追われて焦る幸助に追い打ちをかけるように、徐々に杉子に『死神』の存在が忍び寄る。 残り少ない時間の中で幸助は「山の絵」を無事に取り戻し勤を元に戻す事ができるのか!? 果たして女の目的とは何なのか!? ムシャ・シガとは何者で彼らの活動とは!? 杉子を死神から守り助けることはできるのか!?
ストーリーを読むと
「ああ、よくある”夢を飛ぶ”やつね」
って思うかもしれないですけど、この当時は確かこういう設定・世界観の映画ってなかったんです。
(忍者にしても、これにしても、映画で観たいのに無いから作ってやろうとしてた訳で・・・)
でも確かこの翌年くらいにロビンウィリアムズの主演映画で『奇蹟の輝き』って作品が上映されたんですけど、僕がイメージしていたのはまさにあんな感じでした。(『奇蹟-』は未見なので詳細はわかりませんが、予告をちらっと見た感じの映像や世界観がまさにコレの目指すところでした。そりゃ無理8ミリじゃ無理だわ)
毎回やろうとすることが時期尚早すぎるんですね。
こうして撮りたいストーリーを夢想しつつ、でも技術的にどうしても無理で短編作ってるっていうストレスから次第に
「もう出来る範囲で撮れる世界観バッチリの長編娯楽を作ってやろう!」
って流れで忍者映画になった訳です。
「其の表」と「其の裏」がカラーとモノクロの二本立てなのは、もろにこの作品の未練に引っ張られてました。